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第一章
旅立ちの微風
私の心は、静かなる海のように
穏やかだった―それは長い間、
変わることのなかった日常の海だ。
友達としての温もり、笑い声、
支えあう繋がり。
けれど最近、心の海に小さな波が
起こり始めた。
長い間友達だったハルに対して、
友情以上の何か特別な感情を
抱くようになったのだ。
私たちは今週末、グループで旅行を
控えており、心の中で渦巻くこの感情の
波が旅行でどのように変わるのか、
私には予測もつかない。
この旅は、
私たちが毎年恒例で行っていた。
いつものように、
同じ景色を共にするはずが、
私の目はハルに釘付けだ。
車窓からのひときわ美しい景色に
胸をときめかせながらも、
隣に座る彼の存在が気になって
しかたがない。
「キレイだね」と私が言うと、
ハルはただ「うん」と答えた。
会話はいつものように軽やかで、
私たちの間には笑い声が絶えない。
だが、その笑顔の向こうにあるものを、
私は今まで以上に感じ取れてしまう。
彼の眼差しの優しさ、
ちょっとした触れ合いの暖かさ、
それらが私の心に微かな震えを与えていた。
私たちが訪れたのは、
湖畔に位置する小さな町。
水面に映る星の煌めきがロマンチックな
夜を演出してくれた。
木立ちの間を歩くと、
ハルがふと立ち止まり、
星空を見上げる。
「星って、遠くにあるようで実は
心のすぐそばにあるんだよな」
と彼はつぶやく。
この言葉に、私の気持ちはまるで
星空に投げかけられた石のように
波紋を広げた。
夜が深まり、テントに戻る頃には、
私の中の星は輝きを隠しきれずにいた。
だが、これは友情を脅かす感情かも
しれないという恐怖があった。
ふと心にもう一つの疑問が浮かぶ。
「今の関係を壊したくない」
という安全な考えと、
「本当に心から望むものは何か」
という探求心とがせめぎ合っていた。
私たちはいつものように
ジョークを言い合い、
過去の旅行の思い出に笑ったけれど、
私の心の隙間は日に日に
大きくなり始めており、
その隙間の奥深くには
新たな願望が芽生えていた。
旅の終わりが近づくにつれ、
私はハルに対して抱いている
感情とどう向き合うべきか、
ますます悩むようになっていた。
友情と恋、日常と非日常の狭間で、
私の心は揺れていた。
しかし、この旅が私に与える感情の
変化を受け入れることで、
何かが動き始める予感もしていた。
この旅で得た感情は、
まるで季節の変わり目のよう。
冬から春に移り変わるとき、
ひっそりと溶ける雪のように、
私が長い間抱えていた確固とした日常が、
柔らかな不確かさに溶けてゆく。
そして旅は続き、ハルとの距離は変わらず、
しかし私の心の中では確実に何かが
変わろうとしている。
それは脅威なのか、
それとも新たな扉の開く鍵なのか
―それを知る日は、きっとそう遠くない。