【たぴ小説】旅立ちの微風。私の心は、#2

旅行

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第二章

新緑の囁き

湖畔の町を後にした私たちは、
山脈を抱く小さな村に向かう。

車の中で、ハルはいつになく静かだ。
彼の沈黙は普段の彼からは考えられないもので、
その変化が私をますます不安にさせる。

外に目をやれば、窓越しに見える若葉が
季節の移ろいを教えてくれる。

「ハル、どうしたの?考え事?」
私が尋ねると、彼は驚いたように目を
見開いた後、やわらかい笑顔を見せる。

「あ、うん。ちょっとね。」
「でも、大したことじゃないよ。」
彼の答えには本心が見え隠れしていた。

私はハルに何が起きたのか想像が
つかなかったが、たとえ私の感情を
告白するタイミングではないとしても
、彼の心に寄り添う必要があると感じた。

村に着くと、私たちは息を呑む。
茜色に染まる山々、清涼な川の流れる音、
そして光と影が織り成す自然の描画は、
我々の心を和ませる。

村人たちの温かな歓迎と共に、
日が暮れるまでのんびりと時間を過ごした。

夕食は地元の美味しい料理で心も体も
満たされた。

食後、ハルは散歩に誘ってくれた。
微かに光る星空の下、私たちは川沿いを歩く。
静けさの中で、私たちの足音だけが
小さなエコーとなった。

「ねえ、ハル。私たち、いつも一緒にいるけど、
変わらない関係って思う?」

不意に私は聞いてしまった。

ハルは歩みを一時停止し、
私をじっと見る。

「そうだな。一緒に過ごす時間が増えるほど、
変わらない強さを感じるけど…でも、
人は変わるものだよ。それが自然なことだと思う。」

ハルの言葉には、
自分自身の成長と私たちの関係が
どう変わるかも含まれているように感じた。

彼の哲学的な答えは、
同時に私の思いへの扉をたたくものだった。

彼に本音を告げるべきかどうか、
心が揺れ動いた。

「私も変わったかもしれない」
と私は小声で呟く。

しかし、その言葉は夜の空気に吸い込まれ、
ハルの耳には届かなかったようだった。

夜が深まるにつれて、
私たちの間に流れる空気には、
以前よりも深みが増していく。

寄り添う距離は変わらずとも、
心の中では新しい芽がひっそりと
息づいていた。

私はそっとハルの手に触れた。
彼の温かい手の感触が、
私の戸惑いを和らげる。

この旅で、
私の心はどんな動きを見せるのだろうか。

友情の枠を超えた何かが、
そっと胸の内を突き動かしている。

明日の光が、今この瞬間の私たちの影を
どのように映し出すのか

感情の変化を受け入れつつ、
私はハルと共に新たな日を迎える
準備をしていた。